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■【対イングランド戦】強敵イングランド下す-出稼ぎ青年も7万円払い応援
6月22日(土)
六月十八日に仙台で行なわれた日本対トルコ戦は、やり方によっては勝てただけに惜しい試合だった。日本代表のトルシエ監督は、ツートップにいつもの鈴木と柳沢の代わりに三都主と西沢を起用。三都主はフリーキックをポストに当てるなどあわやという場面を作ったが、西沢はほとんど何もできなかった。結局、日本は前半にコーナーキックからヘディングで奪われた一点を返せずに惜敗。試合後のスタジアムでは涙を流して悔しがるサポーターも少しいたが、大多数のファンは大人しく淡々と家路につく。このあたり、ワールドカップに対する執着心の点でもサッカー強国とはまだかなりの差がある。
一方、共催国である韓国は同じ日に韓国・大田(テジョン)でイタリアと対戦。イタリアが前半早々に一点をあげて逃げ切りを図るというイタリア得意の展開となった。しかし、韓国は前半四十三分に韓国が右からクロスを入れ、イタリアのディフェンダー、パヌッチがクリアミスするところを韓国のストライカー、ソル・ギヒョンが蹴り込んで同点とする。そして、そのまま延長に入るが、延長前半の終了間際にイタリアのトッティが相手タックルを受けて倒れたところをシミュレーションと判定されて二枚目のイエローカードをもらって退場処分を受ける。これで試合の流れが大きく韓国に傾き、延長後半十二分、左からのクロスをアン・ジョンファンがヘディングでゴール右上隅に決めて韓国がVゴール勝ち。六十六年のイングランド大会で北朝鮮がイタリアを破っているが、三十六年を経て今度は韓国がイタリアを破る大金星をあげた。ただし、韓国への審判の身びいきが目立った試合ではあった。
そして、二十一日はブラジル対イングランド戦。「サッカー王国」対「サッカーの母国」という準々決勝きっての好カードに、静岡エコパ・スタジアムは四万六千人の観衆で埋まった。スタンドは、ブラジル、イングランド双方への応援でほぼ真っ二つ。僕の隣に座ったのは日系人らしい青年で、話しかけてみると、やはりサンパウロ州サン・カルロスから出稼ぎに来ている二十三歳の日系三世だった。滋賀県の長浜というところで車のシートベルトを造る工場で働いているという。「この試合のチケットをどうやって手に入れたの」とたずねると、「今日、スタジアムの近くでダフ屋から七万円で買った」との答。これには絶句してしまった(ちなみに、彼の席の定価は百二十五USドル=一万五千円程度である)。
大歓声のなか、試合が始まった。ブラジルは、スリーバックにツーボランチの布陣。テクニックではブラジルの方がはるかに上で、ブラジルの攻勢が続く。しかし前半二十三分、イングランドはヘスキーが右サイドからクロスを入れる。ボールはブラジルのディフェンダー、ルシオの正面に飛んだのだが、ルシオがトラップミスを犯してボールをオーウェンにプレゼントしてしまう。これでオーウェンはゴールキーパー、マルコスと一対一となり、ゴールのど真中に蹴り込んで先制した。
ブラジルはその後もゲームを支配して攻め続ける。この努力がようやく実ったのが、前半のロスタイム。ロナウジーニョ・ガウーショが得意のドリブルで中央を突破し、ゴール前でイングランド守備陣を引き付けておいてから右サイドにいたリバウドにパス。リバウドがこれを決めて同点とした。そして、後半十六分にゴール前中央やや右よりのフィリーキックをロナウジーニョ・ガウーショが直接入れて逆転、ブラジルが逃げ切った。主審が試合終了のホイッスルを吹いた瞬間、僕の隣のデカセギ君は飛び上がって喜んでいた。七万円は痛かっただろうが、勝ったことでブラジル人としてのアイデンティティーを確認できたにちがいない。
これで、ブラジルは三大会連続のベスト四入りを決めた。準決勝ではセネガルとトルコの勝者(おそらくはセネガル)との対戦となり、これに勝つと決勝に進むことになる。決勝の相手は、韓国対スペインの勝者とドイツの試合の勝者。FIFIA(国際サッカー連盟)もさすがにこれ以上韓国を助けるわけにはゆかないだろうから、韓国対スペインはおそらくはスペインが勝つだろう。そして、スペイン対ドイツの試合は希望的観測も含めてスペインが勝つものと予想する。いずれにせよ、ブラジルが五回目の優勝を飾る可能性が大きくなってきた。
サッカージャーナリスト 沢田啓明 |