◇獣の話(7) 貧歯類 〔タマンドゥアー・バンデイラ、続き〕 面白いことに雨が嫌いで、パラパラ、ザーッと雨が降る音がすると、うずくまってしまう。それで森の中でいきなり出会うと、向こうも立ち上がって大手を拡げている。うっかりこれに突っかかると抱きしめられて、それこそ「死の抱擁」である。 それで付近に落ちている木の枝や椰子の葉で、地面や下草を撫でてサラサラ、ザーッと擬音をたてると、雨だと思ってうずくまる。そこですかさず手ごろの木切で脳天をポカリとやる。矢でも鉄砲でも通らぬような頑丈な身体をしているくせに、ここが弱点らしく、それほど力を入れたとも思われぬのにストンとひっくり返る。しばらくすると、またもくもく動き始める。そこでもう一度ポカリとやると、またストンといく。朦朧としている間に急いで通り抜ける。 いざ来いと仁王立ちなる 蟻喰ひの時雨に遭うてし ぼむ可笑しさ 〔タマンドゥアー・ミリン〕 タマンドゥアー・バンデイラより小さく、単にタマンドゥアー、あるいはマンビーラともいう。犬くらいの大きさで黄褐色。尾は房になっていない。普通に見かける種類である。 農業者の大敵であるサウヴァ蟻やその他の蟻、白蟻などを食べてくれるので益獣である。木に登ることもできる。セアラー出身の者は、これを食べるというので試しにやってみた。ゴヤバの葉を入れて煮ると臭いが抜けるというので、そうやってみたが、臭いが強くてどうもいただけない。一口食っただけでうんざりして、側にいた犬にやってみたが、犬もちょっと臭いを嗅いだだけで「フン、こんなもの」とでも言いたげな顔をして横を向いてしまった。 〔タマンドゥアー・イー〕 体長二十五センチくらいで黄褐色が多い。樹上に生活する。この剥製にしたものは福を招くといわれ、よく田舎の小店などに掛かっているのを見たことがある。 貧歯類 〔樹懶〕(なまけもの) プレギッサといわれ、体長約六十センチ、淡褐色で、木の葉や芽を食用とする。好んでイムバウーバの葉や芽を食べる。動作はすこぶる緩慢で、そのためこの名がある。 人のよいお婆さんのような顔をしている。動作は緩慢なくせによく泳ぐ。泳ぐといっても、毛が密生しているので、ポテンと水に落ちても、まるで何か毛の固まりが浮いている感じである。それでも手足をゆっくり動かしながら、なんとか思う方向に進んで行く。アマゾン河を横断したという記録もある。 〔[徐〕(鎧鼠) タツーという。日本ではアルマジロといわれている。鎧のことをアルマドゥーラというから、それから来たのかもしれない。 何種類かあり、大は体長八十センチくらいから小は二十センチくらいあり、ともに土中に穴を掘って群居する。植物、昆虫、腐敗した動物の死体などを食べる。それで墓穴の中でタツーを発見したり、マラリアで死に絶えた家を覗いてみると、タツーが何匹も寄って、死んで腐った人の肉を食っていた、との話が絶えず、人によっては絶対にタツーを食べない。種類にもよるが、タツー・ガリンニャといわれる種類は美味である。 驚くべき速度で穴を掘る。そのため、ブラジル人は地下鉄工事用のトンネル掘り機に「タツーゾン」(ゾンは巨大の意)の綽名を進呈した。つづく (坂口成夫、アレンケール在住) アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(1)=獰猛なジャカレー・アッスー=抱いている卵を騙し取る猿 アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(2)=示現流の右上段の構えから=ジャカレーの首の付け根へ… アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(3)=ジャカレーに舌はあるか?=火事のとき見せる〃母性愛〃 アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(4)=スルククー(蛇)は〃強壮剤〃=あっさり捕らえ窯で焼き保存 アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(5)=4メートル余りの蛇退治=農刀、下から斬り上げが効果的 アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から連載(6)=伝説的大蛇、信じられるか?=残されている〃実在〃証拠写真 アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(7)=両頭やミミズのような蛇も=インジオは怖がるが無害 アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(8)=家畜連れ去る謎の牝牛=初<Aマゾン下りはスペイン人 アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(9)=多彩なアマゾンの漁=ウナギ怖がるインジオ アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(10)=日本と異なる釣り風景=魚獲りに手製の爆弾? アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(11)=商品価値高いピラルクー=カンジルー、ピラニアより危 アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(12)=ジュート畑でショック!=馬をも飛ばすポラケー アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(13)=生殖の営み見せつけるイルカ=インジオは何故か怖がる アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(14)=聖週間の時期〃神が与える〃=魚の大群「捕らえよ」と アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(15)=柔和が裏目、哀しきジュゴン=漁師に習性知られ、あえなく… アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(16)=ミーリョ畑荒らす尾巻猿=群れの首領株仕留めて防御 アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(17)=ケイシャーダ性質凶暴=遠雷にも地鳴りにも似る アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(18)=野性すべて備えた=南米産獣の王者=美麗な毛皮のオンサ アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(19)=カザメント・デ・ラポーザ=ここにもこの言葉「狐の嫁入り」 アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(20)=狩猟で得られる肉の中で最高=パッカ、胆汁は血清のよう アマゾンの動物――在住半世紀余の見聞から=連載(21)=吸血蝙蝠、互いに毛を舐め合う習性=毒塗って放し、舐め合わせ駆除