日本から届いた本にはさまっていた新刊紹介のしおりをみてびっくりした。大化の改新が実際にはなかったという説が発表されて本になっているらしいのだ。
数年前、聖徳太子が実在しなかったという説を聞いて以来の驚きだ。間違いのない歴史などあるわけないのだけれど、こんな大物たちまでが存在すら疑われる事態になるとは。資料が少ない古代史であればこその話だろうか。
この一年半、バストスの八十年史編纂のお手伝いをしてきたが、史料館の仕事としてやっているということもあって、とにかく徹底的に資料を集めておくつもりで取り組んできた。
その集めた資料を駆使して、八十年目に解釈された「歴史」としての八十年史をしっかり書いてもらい、資料は保管しておいて次に歴史を書く将来のバストス市民や歴史研究者に引き継がなければならないと考えている。
同じ資料を使っても歴史は幾通りにも語れる。とりあえずきちんとした資料がいいバランスで残っていればいい歴史研究ができるはずだと思う。いい歴史研究というものは、それがたとえブラジルの小さな一移住地の歴史であっても、人類全体に裨益する。大げさだが、そんな気持ちも持っている。
当時の日本政府がかかわった移住地だったバストスには比較的文献資料が豊富に残っているが、今しかできない資料収集として時間をかけているのは聞き取り調査だ。
それぞれに一応テーマを設定してお話をうかがうのだが、基本的には流れに逆らわずなんでも自由に話してもらうスタイルだ。もう一年以上やっているけれど、うまくできているかどうか自信はない。
肝心なことをちっとも聞けていないインタヴューとして後世の歴史研究者の不評を買うのではないかと不安になることもしばしばだが、ここでひるんではいけないと続けているのは、たとえどんなに力量不足のインタヴュアーによるインタヴューであっても、何も残らないよりははるかに意味があると思うからだ。
これまでに約六十人の方から協力を得た。これだけ残しておけば、将来畑中仙次郎が実在しなかった話にはまさかならないだろう。 こいう聞き取り調査を、全伯的にやったらどうかと思うのだけれどどんなものだろう。歴史資料を残すのだという気負いを持たず、何も残らないよりは、という気になればだれでもすぐに始められるものだと思う。
たとえば各地にいい具合に散らばっているJICAのボランティアが、任期中にひとりでいいから話を聞いてまとめ、冊子にしてはどうだろうか。間違いなく相当貴重な移民史の資料になると思うのだが。
◎ ◎ 【職種】史料館学芸員
【出身地】高知県高知市 【年齢】41歳
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