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■JICA青年ボランティア リレーエッセイ=最前線から

■連載(49)=平安寺映美=エンカルナシオン日本人会=二つの言葉の間で

2006年7月6日(木)

 私がボランティアとしてパラグアイ・エンカルナシオン市に来て、もう一年半が経とうとしている。もう今では、この町で毎日仕事をし、買い物をし、時々は友達とご飯を食べたり、お酒を飲んだりする生活が普通で、あと半年後に日本に帰ることが想像できない。 ここはアルゼンチンとの国境の町。国境にはパラナ川が流れており、橋を渡るとアルゼンチン側ポサーダス市だ。この二つの町には、国境がないかのようにみえる。パラグアイ人はアルゼンチンのほうが安いガソリンをいれに行ったり、品揃えの豊富なスーパーマーケットへ買い物に行ったりする。
 また、アルゼンチン人はパラグアイのほうが安い衣料品を買いに来たり、レストランに食事に来たりする。
 この町の規模は小さいのだが、徒歩圏内に学校、大学、病院、郵便局、各国領事館、スーパー、市場、衣料品店など生活に必要なものが全部そろっているので、とても便利だ。それに治安もとてもいい。日本でイメージする南米とは遠くかけ離れている。ここに住む人は、「パラグアイ中で一番住みやすい町がエンカルナシオンよ」と全員口をそろえる。
 また、約五十三カ国の人々が住む移民の町ともいわれる。ヨーロッパ系、アラブ系、アジア系の人々が住み、道を歩いていても色々な顔をした人たちとすれちがう。そして、その移民の町の一構成員である日系人は約百世帯。ほとんどが商店や医者、レストランなどといった自営業者である。
 パラグアイに来て驚いたことは、日系人の日本語の流暢さだ。パラグアイへの日本人の移住は戦後が主で、五十周年を迎える移住地が多い。
 ブラジルと比べても歴史が浅いためか、未だに綺麗な日本語を話す人がたくさんいる。特に移住地では、日本人同士のつきあいが多いので、日本語のほうが得意な人もたくさんいる。地球の反対側にこんな日本社会があるなんて、想像以上だったので、本当に驚いた。
 しかし日本語が流暢でも、高校・大学・就職とパラグアイで生きていくためには、やはりスペイン語が大切だ。町であるエンカルナシオンのスペイン語学校に進学するために、十二歳前後から移住地を出て来ている学生がたくさんいる。 みな出てきたばかりのころは、授業中に先生が話すスペイン語がわからなくて苦労したという話をよく聞く。
 あるとき、日本語もスペイン語も使いこなす二世の友達がこんなことを言っていた。
 「私は日本語もスペイン語も百パーセント完璧には一生なれないと思っている。だけど、私はこれでよかった。日本語がわからない自分にも、スペイン語がわからない自分にもなりたくない」
 この言葉を聞いた時、最初はショックだった。自分の話す言葉が百パーセントになりえないって、一生自分は中途半端だという感覚で生きていくことなんじゃないかと。
 しかし、彼女は両方の国の人間であるということに誇りを持っているからこそ、こう言えるのだ。私は二つの国の言葉や文化を学ぶことは、勉強の苦労は二倍だけど、その他の面ではチャンスが二倍以上だと思う。
 こちらにない本や漫画は日本語で読み、スペイン語学校では色々な人種の中で生きていく術を身に付け、自分が希望する国で勉強でき、世界で活躍できる人材になれるのだ。
 残りの半年も、子供達が両方の国の文化を持つ人間として誇りを持って生きていけるよう、できるだけたくさん日本のことを伝えていきたい。 
   ◎   ◎
【職種】日本語教師
【出身地】福岡県北九州市
【年齢】29歳

 ◇JICA青年ボランティア リレーエッセイ◇
連載(48)=宇野麻美=ヴィトリア日系協会=「当たり」だった出会い
連載(47)=沢田直子=ドミニカ日系人協会(ドミニカ共和国)=カリブ海の日本語学校
連載(46)=岡本真樹=トカンチンス日伯文化協会(トカンチンス州)=トカンチンスのスター?!
連載(45)=名村優子=エステ日本人会(パラグアイ)=国境の町の学校
連載(44)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=みんなで楽しむ運動会
連載(43)=大畑りつ子=コロンビア日系人協会=コロンビアからコモ・エスタ?
連載(42)=加藤志保=ピエダーデ文化体育協会=「何とかなる」の精神
連載(41)=原規子=西部アマゾン日伯協会=浅黒い肌にしなる腰
連載(40)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=アマゾン加工食品の妙
連載(39)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツはははの一週間
連載(38)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「祖国」について思うこと
連載(37)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=「悔しい」気持ち
連載(36)=後田聡子=レシフェ日本文化協会 =いつかペルナンブカーナに
連載(35)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=子供と正直に向き合って
連載(34)=加藤志保=ピエダーデ文化体育協会=ブラジル―日本間で
連載(33)=今井さや香=コロニア・ピニヤール文化体育協会=村人の優しさに感動
連載(32)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=ブラジルのお盆
連載(31)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=ひらがなや漢字を描く?
連載(30)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=コロニアで聞く戦争体験
連載(29)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「サンタクルス病院にて」
連載(28)=辻 伸二=セルジッペ州日伯文化協会=歌と歩んだアラカジュの2年間
連載(27)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「アマゾンに暮らす」
連載(26)=東万梨花=トメアス総合農業協同組合=パラエンセのスピリット
連載(25)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=書道に日本語は必要?
連載(24)=原田陽子=ピラール・ド・スール文化体育協会=日本の反対側の日本
連載(23)=今井さや香=コロニアピニャール文化体育協会=「ブラジルの空の下で」
連載(22)=池田玲香=マリアルバ文化体育協会=気づいた「日本人らしさ」
連載(21)=山崎由加里=特別養護老人施設あけぼのホーム=〃家族とのつながり〃
連載(20)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=百周年に移民展を
JICA連載(19)=加藤みえ=ボツカツ日本文化協会=ボツカツから笑顔の風
JICA連載(18)=中江由美=ポルトベーリョ日系クラブ=「時の流れもお国柄」
JICA連載(17)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=パンタナールに漂う空間に出会って
JICA連載(16)=宇都宮祐子=Escola Professora Josephina de Mello(マナウス)=料理アマゾナス風
JICA連載(15)=松岡美幸=パラナ州パルマス日伯文化体育協会=「人の温かみを感じる町」
JICA連載(14)=相澤紀子=ブラジル日本語センター=「何を残して何を持ち帰るのか」
JICA連載(13)=東 万梨花=トメアス総合農業協同組合=ブラジル人から学んだ逞しくなる秘訣
JICA連載(12)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「笑顔の高校生達」
JICA連載(11)=原 規子=西部アマゾン日伯協会=元気な西部アマゾン日伯協会
JICA連載(10)=中江由美=ポルトヴェーリョ日系クラブ=「熱帯の中で暮らし始めて」
JICA連載(9)=中村茂生=バストス日系文化体育協会=「日本」が仲立ちの出会い
JICA連載(8)=加藤紘子=クイアバ・バルゼアグランデ日伯文化協会=日本が学ぶべきこと
JICA連載(7)=森川奈美=マリリア日系文化体育協会=「気づかなかった素晴らしさ」
JICA連載(6)=清水祐子=パラナ老人福祉和順会=私の家族―39人の宝もの
JICA連載(5)=東 万梨花=ブラジル=トメアス総合農業共同組合=アマゾンの田舎
JICA連載(4)=相澤紀子=ブラジル=日本語センター=語り継がれる移民史を
JICA連載(3)=中村茂生=バストス日系文化体育協=よさこい節の聞こえる町で
JICA連載(2)=原規子=西部アマゾン日伯協会=「きっかけに出会えた」
JICA連載(1)=関根 亮=リオ州日伯文化体育連盟=「日本が失ってしまった何か」
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