「先生、ストップウォッチ、貸して下さい」。放課後の職員室に次々に子供たちがやってくる。二週間後の日曜日は、陸上大会。その陸上大会に向けて、自主的に練習を始めたのだ。上級生が下級生に教えている。放課後のグランドでスポーツをする子供たちの姿が見られ、日本の学校を思い出させた。
日本では、野球、陸上、テニス、剣道、そして、吹奏楽部、美術部など様々な部活があり、授業が終わってから、日が暮れるまで、放課後の学校では生徒たちが活き活きと活動している。
私も小学生から高校生までバスケットボール部に所属していたが、私のこの頃の思い出といえば、ほとんどこの部活で占められてしまうほど、夢中になり、没頭していたものだ。
末っ子の甘えん坊だった私も、めそめそしなくなったし、努力することを覚えた。そして、チームをまとめるということも覚えたのだ。悔しくて悔しくて我慢していた涙がこぼれてしまう、という体験は、あの時だからこそできたものかもしれない。
「勝つ」ために全力で努力し、持てる力を全て発揮して立ち向かったのに負けたから悔しかったのだ。
ピラール・ド・スール日本語学校では、一九九九年にJICA日系青年ボランティアの体育教師によって、体育と同時に陸上が導入された。練習は金曜日の週一回。陸上で「勝つ」ためにはとても足りない練習時間だが、子供達の習い事や教師の都合もあり、皆でできる日は週に一回しかない。
今までは、その週一回の練習さえ参加したり、休んだりしていた子供たちだが、五年、六年と陸上を続けるうちに子供たちの意識も変わってきたようだ。七年目の今年は多くの子供が自主的に自分たちだけで練習をしていた。
四月九日日曜日、サンパウロ州マイリンケ市で行われた日系青少年陸上大会にピラール・ド・スール日本語学校から十六名の生徒が参加した。練習の成果が発揮され、メダルを首から下げた子供たちは誇らしい顔をしていた。今までの楽しいだけの陸上大会ではない。頑張った成果を発揮する大会に変わったのだ。
「先生、悔しい。今度から週に四回練習するよ」という子供たち。そうだ、悔しいのは努力したから。頑張ったから、悔しいんだ。きっと初めて自分と戦って、生まれて初めて本当に「悔しい」思いをしたのだろう。
私の目の前で、また、子供がぐんと大きくなった。
◎ ◎
【職種】日本語教師
【出身地】広島県広島市
【年齢】29歳 |