ここ二カ月ほど書道出張で、近くはパラナ州、遠くはロンドニア州まで行き、日本語学校で授業したり、日本祭りでイベントを行ったりした。出張では人数が集まれば日系人でも非日系人でもかまわない。
サンパウロ州パカエンブという町を訪れた時のことである。日本語学校の生徒だけでは人数が少ないからと、地元の方がブラジル小学校にも見学に来るよう声をかけた。
非日系人の団体に教えるのはこの時が初めてで不安だったが、いつも私がやっている初心者向けの授業をやらせてみた。
まずすずりで墨をすり、次に筆に慣れさせるために絵を描かせ、そこから基本を練習し、最後は漢字を書く。説明は下手にポルトガル語を使うよりも、実際書いて見せたほうがよく伝わる。漢字はなるべく象形文字(絵からできた漢字)を選ぶ。
日本語を全く知らない彼らにとっては、漢字なんて一種の記号で、それを絵から説明することで、非常に興味をもってくれるのだ。この授業方法は非常に好評で、特に墨すりや絵という遊びを交えた動作をいれることで、子供たちに「書道はおもしろいもの」という意識を植えつけることができる。
私はいつもこんな感じで、なにかおもしろい日本文化と、書道を合体させている。特にブラジルの子供たちは字が上手くなるのが第一の目的ではないから、楽しんでなんぼだと思うのだ。
結局二日間で百人ほどの子供達が来て、てんてこまいで大賑わいの書道授業だったが、みんな楽しんでくれたようだ。その中でも印象に残った子たちがいる。彼らは見学の団体と別に個人で来て、非常に書道に興味をもったらしく、二日間ともやってきた。二回目はその子たちだけを集めて少人数授業を開いたのだが、まだ十歳ほどの子達なのに驚くほど熱心に取り組んだ。
負けず嫌いで自分の思い通りの線が書けるまで何度も練習した子もいたし、飲み込みが早くセンスのいい子もいたし、最後には筆を買いたいという子もいた。 感想を聞くと、「はじめは難しくそうで自分にできるかなと思ったけど、やってみたら意外とできて楽しかった」という答えが返ってきた。私自身も、またこの子達に教えたいと思った。
「書道は難しそう」「日本語を知らないとできないでしょ?」とよく耳にするが、書道を始めるのに人種や日本語の知識は関係ない。単純に、筆をもって書くことに楽しみを感じるかどうかということである。あの授業以来、私はそう確信するようになった。もっともっと、壁を取り払いたい。
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【職種】書道教師
【出身地】奈良県奈良市
【年齢】27歳 |