サンパウロ州ボツカツ市。サンパウロ市からバスで3時間。ボツカツとはインディオの言葉で良い風という意味だそう。そのボツカツへ日本からの新しい風を送ろう!と張り切って意気込んでやってきて約四ヵ月。ところがどっこい、新鮮で楽しく美しい心地よい素敵な風は、日本からやって来たちっぽけな私に毎日まいにち、やさしく吹いてくれている。
日本語教師という素敵な仕事。この広いブラジルで出会うべくして出会った人達。初めて会ったとは思えないようなあたたかくて親切な人々。素直でまっすぐな瞳。ブラジルの日差しよりも強いまなざし。心の中の透明度をはかったらヒオボニータより美しいに違いない。人として生まれ、社会の中で人間として育っていく。
ある金曜日の午後の文化の授業。その日は団子作り。集まった生徒は5人。先生は3人。まずはもち米粉500gにたいしてお豆腐一丁をまぜてまぜてこねる。こちらではお水の加減がむずかしいからとある方に教えて頂いたのだ。(栄養価も高いし、イソフラボンも入っているし)
まずは生地を手でこねるのに「嫌だ嫌だ、わはははは」といってなかなかふざけて始められない。嫌だとふざけているくせに始めると真剣に手つきまで尋ねてくる。おもしろい。「ノッサ!手がベタベタする」と言ってあからさまに嫌な顔をして見せる。
本当に正直。でも結局きちんとこねて自分の分担はやりとげる。手に付いた白い粉を私の手に付けてくる。「やめてー」と言いながら、わはははは。ふざけるっていいなあ。ただもち米粉に豆腐を混ぜるという単純な作業をこんなに楽しんだのは初めてかもしれない。
それから丸めて団子をつくるのだが、やっぱりこれがまた顔をつくったり、四角の団子があったり、特大団子があったり、一騒動。茹でて冷やして、あんこときなことごま味で食べる。初めにごまに砂糖を混ぜるのを忘れたけど、「おいしい」と言ってくれた優しさ。
私よりも幼い生徒のひとつひとつの心使いに気がつくたびに感動して胸があつくなる。そして周りの大人たちの顔が浮かんできてまたまたジーンと心が震えてしまう。
私は知らず知らずの間に、忙しい日本で文字通り心を失っていたのだろうか?今の私が日本に行って同じことをしたら「まあ、いい大人のくせに。そんな暇あるの?」なんて言われそう。
時間に追われ成績や結果に囚われていた。ふざけたりすることなんて想像すら出来なかった。その余裕がなかった。私個人としての発言以前に一会社員としての言動が求められた。自分の感情を隠している時間があった。
ブラジルへ来てからというもの、日に日に心が元気になっていくのがわかる。自分の感じた事を正直に話し、心から笑い、笑顔を見てまた笑い、またその笑い声に笑う。幸せの連鎖反応。何でもない日常がこんなに楽しいなんて思ったことが最近あっただろうか? ブラジルでの生活は子供のスキップのようだ。無駄と言ってしまえばそれまでだけど、何でもないほんの少しのおしゃべりや挨拶やアブラッソが毎日の生活(人生)を豊かにしてくれるのだと教えてもらっている。
本当にここに来ることが出来て、またたくさんの方々に出会うことができてとても幸せだと思う。ありがとう!ブラジル!オブリガーダ!ボツカツ!これからもどうぞよろしく。
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【職種】日本語教師
【出身地】愛知県東海市
【年齢】35歳 |