「えっ、湯たんぽ?」
電話口から、同期の仲間の驚きの声が聞こえてきた。まさか、ブラジルに来て湯たんぽを使うことになるとは、想像すらしていなかった。
私の住むパラナ州パルマスは、クリチーバから南西に約三百八十キロ。サンタカタリーナ州に近く、冬には霜が降りる寒い町だ。イタリア系移民が多く、日系人は、約四十家族と少ない。その多くは、種芋とリンゴ栽培で生計を立てている。
ここでは、十二時を告げる教会の鐘の音を待ちかねたように、店員は店を閉め、昼食のため、自宅に戻っていく。もちろん、映画館も大型ショッピングセンターもない。
物があふれ、深夜でも店が開いている日本の生活に慣れていた私にとって、赴任当初は、戸惑うことも多かった。たが、生活をしていくうちに、ゆったりとした時間の流れの中で、それぞれの人が、自分にあった楽しみを見つけ生活しているこの町が、心地よく感じられるようになってきた。
娯楽施設と言える場所が少ないこの町で、日系人にとって、日系人会館は、なくてはならない場所となっている。週末になると、子供たちをつれて、会館に集まってくる。カラオケや、家族でバトミントンをしている姿がみられる。
子どもたちは、椅子を並べて作った基地で、かくれんぼをしている。生まれたばかりの赤ちゃんを、抱っこしている小学生の姿もある。よちよち歩きの赤ちゃんが転びそうになると、誰というわけでもなく、自然にみんなが駆け寄っていく。
絵の得意な者は、幼い子どもたちにせがまれて、絵を教えている。親以外の大人たちに遊んでもらった記憶のある子どもたちは、自然に、小さい子どもの子守をしている。ここでは、一人一人に、自分の居場所がある。
子どもたちは、生きていく上で大切なものを、大家族のようなこの関係の中で学んでいるような気がする。ここには、誰かの為に手を貸してあげるゆとりがある。
物が溢れていても、人の温かみを感じることが出来ない場所は、私にとって心地よい場所ではない。「人」という字の通り、お互いに助け合いながらも、もたれ過ぎず、たくましく生きているパルマスの人たちが、私は、好きだ。
私は忘れかけていた大切なものを、この小さな町で思い出させてもらっている気がする。
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【職種】日本語教師
【出身地】宮城県仙台市
【年齢】33歳 |