■デカセギ=全国のモデルケース=大泉町の最新事情(終)=日系人を支える日本人=「80年後の日本人」とみなす
11月26日(火)
去る六月三十日、W杯決勝戦の三時間前には、群馬県大泉町のブラジリアンプラザは一千人を超えるブラジル人サポーターで埋め尽くされた。「すごかったよ、あの時は」とブラジル食品雑貨店キタンジーニャの新垣パウロ修さん(三七)は振り返る。
新垣さんは同プラザの責任者として、全ての試合の前に近所の日本人宅に挨拶回りし、理解をお願いした。と同時に試合前後には、マイクを通して「外では騒がない」「酒を飲んだら車を運転するな」と繰り返しポ語で訴えた。
地元新聞の日本人記者の話では「ブラジルが決勝で勝った時の騒ぎでは、他人の車の荷台に乗り込むなど無茶な騒ぎ方をしたのは日本人の若者ばかり。むしろブラジル人のひとたちのほうが、気配りして周りに迷惑をかけないように喜んでいた。『喜び方を心得ているな』と感じた」という。
ブラジル人側の努力を認め、応援してくれる人も徐々に増えてきている。
今月十二日付けの地元紙・上毛新聞の市民による論壇「視点 オピニオン21」には、日系ブラジル人親子を支援するNPOヴェルジの会代表、飯塚敏正さんの意見が掲載された。
その中で「われわれは外国人を見ると一歩引いてしまい、その人を理解することを避けてしまうのではないでしょうか」と自省を催しながら、「日系人は字の通り、日本人を先祖にした人たちですから、元をただせば日本人ということです。今から八十年前を思い返せば明らかですね。(中略)しかし、これから八十年たつと、彼らの子孫は立派な日本人となります。ですから、今から誠実に彼らと向き合っていく必要があるのです」と呼びかけている。
つまり、地元社会側の市民リーダーの中には、様々な問題を抱えたデカセギたちを「八十年後の日本人」とみなし、今、誠実に向き合おうとする人がいる。
また、五月十九日付け同「オピニオン21」には、小泉重田小児科理事長の重田正信さんの「外国人子女・言語習得環境の充実を」という意見も掲載された。
「これまで日本人は単一民族としての意識が強かったが、やがて先進諸外国の例に漏れず、多民族、多文化社会への道を歩むことになろう。(中略)県民の皆様が日本の多文化社会化へのパイオニア精神をもって、この問題に深い関心を示されることを期待したい」。
大泉町の告発文にあるようなアンチ外国人勢力もあれば、このような擁護論も張られる。
日本人自身が外国人受け容れを巡って、逡巡している重要な次期だ。事態が常に流動的だからこそ、前節で見たように、デカセギたちも彼らなりの問題解決の模索を始めている。
デカセギ現象に関しては本来、三つの当事者がいる。デカセギ本人、送り出し母体の日系社会、そして、受け容れ母体の日本社会。日本社会も、デカセギ本人も事態の調整に動きを始めている。これらの動きに対して、ブラジルの日系社会は従来どおりただ傍観していればいいのだろうか。
デカセギ現象は日伯関係史上最大の人的交流だ。
にも関わらず、日本との接点である主だった日系諸団体は、これまで何ら対策を講じてこなかった。デカセギ現象が、今後の日伯関係に及ぼす影響が良いものになるのかどうか、今の段階では誰にも判断できない。確かなのは、傍観するのみでは好転はありえない、ということだ。 ―おわりー
(深沢正雪記者)
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