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■日系ゼロ 聖州下議・州議選を振り返る(2)=可能な援助の応援=戦後政治家には使命感

11月5日(火)

 コチア、南伯、南銀・・・大量の組織票や資金援助を見込める日系の企業・業界団体の数々が歴史の波に飲み込まれて久しい現在、サンパウロ州で最大の日系団体として挙げられるのはまず、援協だろう。
 援協の会員は現在約一万三千人、増加はなおも続く。加えて、各界で活躍する理事が四十人、地方にも顔役的な役員が点在。管理下の病院、施設などで働く従業員は千三百人を超える。 
 それぞれの背後に数人いるとして――。和井会長は考えた。援協の組織票をバックに最低一議員は送り出すことが可能である、と。
 「私たちの理念に共鳴してくれて、それがブラジルのためになることであれば。適当な人を応援することは厭わない」 
 ただ、公益団体としての性格上、定款で政治活動は制限されている。これは文協や県連も同じで、岩崎秀雄文協会長は、明るい見通しを期待する赤阪総領事の問いかけに、「うちは公益団体ですので・・・」。具体案を示すことが出来なかった。
 「では、援協は構わないのですか」と、総領事は和井氏の顔を見た。当日こそは明言を避けざるを得なかった和井氏だったが、後日、記者からの同じ質問に対して、「定款は変えられる」。その場合はもちろん、公益団体から外れることになるが、前向きな姿勢をのぞかせた。 
 上野アントニオ氏、野村丈吾氏といった歴代の日系下議に、日本から医療機器を通常輸入する際にかかる税金の免除を、その都度働きかけてもらった経緯もある。和井氏は日系議員の意義を痛感する。
 一方で、こうも話す。「援協も長い歴史を培ってきて、日伯友好病院の地域貢献もあり、今は日系以外の議員も理解を示してくれる。だから、昔ほど日系議員の必要性も感じなくなっている」
     ◇
 タムラ、タムラ――。投票日も迫まり、なんとか「おらが社会の代表を」とほとばしる移民がいた、二世がいた。日系人として初めて、サンパウロ州議に就いた田村幸重氏はこの熱狂に答えようと、ユニークな演説をひねった。 
 「この手を見て下さい。先に訪日を果たした際に、天皇陛下と面会、握手をして来た手です。それ以来、手は洗っていません。つまり、みなさまは陛下の御手と・・・」 
 効果はてきめんだった。いや、当時の移民やコロニアよりの二世をくどき落とすのに、これ以上の文句はなかった。サンパウロ人文科学研究所の宮尾進所長は、「コロニアという地盤が存在したことを示す典型的なエピソード」と話す。
 田村氏は一九五〇年十月の総選挙でサンパウロ市議から同州議に当選。獲得票は六二二〇票だった。まだ有権者が国民全体の二割弱に限られていた時代。同七割近くが選挙権を持つ現在で言えば、二万票に手が届くか、届かないかの数か。
 続く四年後の選挙で、田村氏は下議へとコマを進める。ときはサンパウロ市立四百年のこと。高まるナショナリズムを背景に、かってはびこった同化主義も次第に弱まりを見せ、コロニアは創立記念式典への参加・協力を要請されたのを契機に、まとまりを見せていた時期でもあった。
 一方、この頃から、地方から都市への移動が盛んになる。サンパウロ市内のフェイラや洗濯業者に日系人が目立ち始めたことで、「わが民族」の代表としてだけではなく、同時に「わが業界」の声を代弁する日系の政治家が求める気運がコロニア内部で高まっていた。
 田村氏が下議当選を決めた一九五四年の選挙には、日系候補四人が州議選に立候補するも、まだ知名度が低かったか、全員が落選。しかし、日本移民五十年と重なった五八年選挙では日系五人が同じく州議選に出馬し、内山良文、平田進の二人が当選している。これは民族意識と共に、生業を支える業界利益を守ろうという勘定が、両輪としてうまく働いた結果とも言えた。
 そして何よりも、政治家の側に使命感という名の大きな「ロマン」があった。    (小林大祐記者)

■日系ゼロ 聖州下議・州議選を振り返る(1)=大使らの願い届かず=日系人を評価するPT

■日系ゼロ 聖州下議・州議選を振り返る(2)=可能な援助の応援=戦後政治家には使命感

■日系ゼロ 聖州下議・州議選を振り返る(3)=ロマンよりカバン=日伯交流の積極推進も

■日系ゼロ 聖州下議・州議選を振り返る(4)=威光失った日の丸―大きい日本経済の影響

■日系ゼロ 聖州下議・州議選を振り返る(5)=半ば外国人の印象―政治より実務、官僚向き

■日系ゼロ 聖州下議・州議選を振り返る(6)=光放った自信自負=「政治の季節」燃え尽きる

■日系ゼロ 聖州下議・州議選を振り返る(7)=政党政治の時代へ=日伯問題関心薄れがち

■日系ゼロ 聖州下議・州議選を振り返る(8)=飯星氏得票の7割日系=新リーダー待望する若者

■日系ゼロ 聖州下議・州議選を振り返る(終)=母国との交流強化を=文化面の協力にも期待

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