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■サンパウロビエンナーレー終

4月12日(金)

 こういう理屈抜きに向き合えるものが、現代アートの中に交じっていると、「ほっとする」人が多いかもしれない。 
 映像作家アルツル・オマル(ブラジル)が色鮮やかに切り取ったアフガニスタンの風景と人々の点描。引き伸ばされた写真がゆとりのある展示会場に映える。
 アルツルといえば、前回九八年のビエンナーレに出品した「輝ける顔の人類学」シリーズで一般に知られる。ぶれた光と陰影の強い対比。極端にアップで狙った顔写真の連作が印象に残る。七〇年代には実験的な映像作家でもあった。だが、このところは、その作家性が影を潜め、限りなく記録映像に近いスタイルで世界と向き合っている。最近個展で見せた、アマゾンでの仕事振りもそうだった。
 アルツルはテレビ番組「ファンタスチコ」(グロボ局)の取材陣の一員として彼の地へ乗り込んだ。昨年三月、タリバンの爆弾でバーミヤンの遺跡群が崩壊した後のことだ。
 アフガニスタンの文化に残ったのものは何か。 
 五世紀に建立された仏像は取り返しのつかない損害を被った。壮麗な建築物の数々も今や廃虚と化してしまった。抜けるような青空の下、果てなき荒野に崩れ落ち、風にさらされているその姿が無常感を誘う。
 しかし、人々は底抜けに明るいのだ。特に子供たち。あの目の力強い輝き。すすやほこりで汚れた顔に玉のような瞳が光る。廃虚の都市でも、首都カブールでも人々の活力は失われていない。アルツルの写真が、グロボの番組(会場で常時放映中)が、それを物語る。
 伝統ある建物など壊れたところで、どうであろうか。そこに生きていく人さえしっかりしていれば、未来はある。
 「都市」をテーマに展開されている今ビエンナーレ。美術作品を通じて世界各国の都市像と生活者の心に触れることができる中で、アフガンがまるでユートピアのように思えてくるのは皮肉である。「荒廃」しているのはむしろわれわれが住む都市の方なのかもしれない。
 (小林大祐記者)


■サンパウロビエンナーレ-その1

■サンパウロビエンナーレ-その2

■サンパウロビエンナーレ-その3

■サンパウロビエンナーレ-その4

■サンパウロビエンナーレ-その5

■サンパウロビエンナーレ-その6

■サンパウロビエンナーレ-その7

■サンパウロビエンナーレ-その8

■サンパウロビエンナーレ-その9

■サンパウロビエンナーレ-終

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