■コロニア ニッケイ社会 ニュース

■コロニアニュース

■ブラジル国内ニュース

■コラム

■企画

■会社案内

■リンク集

■トップページ


■再浮上する日伯学園構想―第四部 日本と国際学校10−多文化共生と平和=|100年の意味を問い直す

4月6日(土)

 伝統継承にこだわりがちな一世の思惑だけでは、統合型の学校建設は難しいかもしれない。予想される二・三世層との意識のくい違いに加え、駐在員層や日本政府との建学理念の共有は不可欠だろう。
 第三部で見てきたように、多くの外国系学校は、本国の伝統を子孫に伝える仕組み≠ニして、移民一世によって作られてきた。しかし、時代を経るにしたがって、その役割は徐々に変化した。
 ドイツ系プロテスタントのコミュニティから創立したポルトセグーロが、本国との太いパイプを維持しつつ、生徒の大半をブラジル人にすることにより、その役割を国際的人材の育成と、文化普及に変化させ、現在の隆盛に至ったことは象徴的だ。
 同校でバイリンガル教育を受けた非ドイツ系生徒は、ドイツ人としてのアイデンティティを形成させられるのでなく、ドイツに友好的な価値観を持った青年に成長する。
 特に七〇年代以降、本国からの企業進出が本格化すると、子弟教育の重要性は相対的に減少し、逆に多国籍企業で働けるバイリンガル労働者の供給源としての役割を強化してきた。本国政府にとっても、外国で自国の文化普及を普及させる存在として価値が高い。
 教育理念の脱一世化を図ることにより、本国はもとより、ブラジル社会でも広く認められる存在になった訳だ。
 なぜ日墨学院が国際学校として認められているのか。それは「日本」対「日系社会」という民族の枠を超え、「日本」対「メキシコ」という国際レベルの建学理念を持ちえたからだろう。
 基本的に日系社会と接触の少ない駐在員層に「日系民族の後継者育成」を訴えても、理解されるだろうか。
 移住者援護を縮小させている日本政府も、外国での日本文化普及は永遠の命題だ。海外に親日派を育成する方法として、興味深い実験になるだろうか。
 これらの事情や他外国系学校の動向を考えると、教育理念は「日系民族の後継者育成」ではなく「国際理解や文化普及」にした方が、賛同が得られやすいと予想される。
 つまり、日系子弟向けの学校ではなく、ブラジル人向け(当然、日系子弟も含む)の学校になる。
 そうすれば日墨学院の高邁な建学理念を、日伯学園に置きかえられる。
「日本ブラジル両国民の相互理解の増進と教育文化の交流を図り、人類の連帯感を育み、世界の平和と繁栄に貢献し得る国際性豊かな、且つ両国民にとって有為な人材を育成することが本学園の目的であり、建学の精神もここにある」。
 このような世界平和に貢献できる国際性豊かな人材≠ノ加えて、ブラジル社会の特長である多文化共生感覚を体に染込ませた人材≠育成することは、実に現代的ではないだろうか。
 高まる戦争不安、民族紛争の波、揺らぎ始めたアメリカを中心としたグローバリゼーション。不安定さを秘めた時代だからこそ、新しいタイプの人材が求められており、そこに、なぜ今構想するか、という意味も出てくる。
 つまり、統合型を前提とすれば、ブラジル人向け学校になり、当然、設立委員会にも、非日系の、親日派著名人や学識者が名を連ねてもおかしくない。
 カリキュラム的にも、日本コースは日本の文部科学省の管轄下に置かれるし、ブラジル・コースでも大半が非日系生徒であれば、後継者育成≠フ出る幕は少ない。
 ただし、日伯学園がネットワークの要(かなめ)として機能すれば、年々日本文化が見直されるようになり、デカセギ帰国者も含めた二世・三世層が新しいコミュニティを作るようになり、結果的に後継者が育成されるかもしれない。だが、USP教授の鈴木妙さんは「あくまで結果論」と強調する。
 一口に日伯学園といっても、さまざまなタイプが考えられる。教育理念一つとっても、実に広範な議論が必要であり、それ次第では、まったく異なる学校が生まれる。
 学園建設がうたわれ始めて四十年弱…。社会情勢や、日系社会が大きく変わった今も、昔ながらの学園構想が、亡霊のように一人歩きしている感も否めない。誰が、誰のために、何のために必要なのか。そして、そのために一世ができるのはどこまでか―――。
 移民百年という大きな節目に、この学園構想の明確な意味と、目的を改めて問い直し、話し合うことは、今後のコロニアのあり方や、日伯関係全体を見直す絶好の機会になるだろう。
 第一部で紹介した古参移民の言葉を、もう一度掲げ、今連載の最後としたい。
「文字が変だといって、それだけでブラジル人に嫌われた戦時中は、そんなに昔のことじゃない。ここで生き残っていく人々が、そんな嫌な経験を二度としなくてもすむように、日本文化に理解あるブラジル人を増やすだけでも、日伯学園は大事なことだと思う」。
(連載完 深沢正雪記者)


再浮上する日伯学園構想−第1部 日伯学園をめぐる戦後移民史

再浮上する日伯学園構想−第2部 日系ブラジル学校の現状

再浮上する日伯学園構想−第3部 外国系ブラジル学校をめぐる諸相


■再浮上する日伯学園構想―第4部 日本と国際学校−日亜学院−経済危機が直撃!! −「日本の卒業資格を」

■再浮上する日伯学園構想―第4部 日本と国際学校−(2)−日パ学院−既存教室を借用−70周年に校舎建設へ

■再浮上する日伯学園構想―第4部 日本と国際学校−(3)−日墨学院@−独系のような学校を=|駐在員と共に周到に準備

■再浮上する日伯学園構想―第4部 日本と国際学校−(4)−日墨学院A−少しでも統合教程へ−絶え間ない国際化努力

■再浮上する日伯学園構想―第4部 日本と国際学校−(5)−本国の資格取得できる−統合型≠ェ世界の常識

■再浮上する日伯学園構想−第4部 日本と国際学校−(6)―韓国領事―「実験的に承認」−英語圏にはすでに統合型″Z

■再浮上する日伯学園構想−第4部 日本と国際学校−(7)-学校網の構築をー存在感増す社会的仕組み

■再浮上する日伯学園構想−第4部 日本と国際学校−(8)−一世の役割とは?−くい違う世代意識

■再浮上する日伯学園構想―第4部 日本と国際学校−(9)―民族への回帰、一世にとっての日伯学園―国に誇り≠ヘネオナチか?!

■再浮上する日伯学園構想―第4部 日本と国際学校−(10)−多文化共生と平和=|100年の意味を問い直す

Copyright 2002 Nikkey Shimbun (Jornal do Nikkey)