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■再浮上する日伯学園構想−第三部 外国系ブラジル学校をめぐる諸相−(14)−EU統合に呼応−テコ入れ強める欧州本国

3月15日(金)

 九八年十一月十一日付Veja誌によれば、ブラジルには三十校以上のバイリンガル校があり、二万五千人がそこで学んでいると推測される。その数は八八年に比べて五倍になっているという。
 バイリンガル校の大半は、今まで見てきたような外国系ブラジル校だ。
 戦前は移民が中心になって、二世三世に祖国文化や伝統を受け継がせる目的で学校を設立した。ところが七〇年代の多国籍企業の進出以来、本国政府と企業が人材確保のために移民が作った学校に肩入れするようになり、流れが変わった。
 グローバリゼーションや、EU統合をにらんで、七〇年代以来、ヨーロッパ系学校が競争するように新設・拡張してきたのが、近年の傾向だ。
 ドイツ系は今まで見てきたように、本国政府や企業が、既存の学校にてこ入れする形で拡張してきた。
 それまで主だった学校がなかったスペイン系の場合は、本国政府がわざわざ肩入れして一九七八年にコレジオ・ミギェル・デ・セルバンテスを作った。
 すでに九十年の伝統を誇るダンテ・アリギィエリを持っていたイタリア系だが、同校がブラジル・カリキュラムしか持っていないことから、八二年にイタリア学校エウジェニオ・モンターレ≠モルンビ区に新設した。
 この学校はEscola Italianaを名乗るだけあって、本国式に八月二十五日に新学期が開始され、六月中旬に終了する。保育部から高校部まであり、それぞれに本国の卒業資格も与えられ、ヨーロッパの大学への進学準備ができる特徴を持つ。
 ユダヤ系は学校を、文化伝承を子孫に行う仕組みとして認識し、コロニア全体で支え育む姿勢を見せている。
 コレジオでユダヤ思想を身につけた子は、後に大学でユダヤ思想の存在感を示す。そして将来的に大企業に就職して出世したり、官僚になって国を左右する人物になることが期待される。
 そうして世代が経つにしたがい、ユダヤ思想の存在が理解されるようになり、その国で迫害されにくくなる。
 世代を経るごとにより繁栄する仕組みを一世が作り、二世以降はそれを継承・修正する中で、途切れることなくコロニアが拡大発展する。
 一世の仕事は、大きな組織を作るだけでなく、それを存続させる仕組みを作るところまであるとする。でなければ、世代代わりする時代になった時、その組織は潰れてしまう。
 迫害され続けてきた歴史が、彼らの生き残り哲学を磨き、試行錯誤させてきた。彼らにとって迫害されることは、文化伝承が消滅させられることではない。
 それを踏み台にして、同じことが将来起きても乗り越えられるよう、より強力な生き残り策を模索させる動機にしてきた。
 それらを実行する全ての基本として、豊かな生活を営んでいなくてはならないと考える。「貧困は同化と同意語」とするから、経済活動に力を注ぐ。繁栄すればするほど、その力はコロニアに還元し、文化は伝承され、その国に影響力を持つようになる。
 ドイツ系もまた学校を、文化を伝承する仕組みと考え、本国・企業・移民が一体となって支えている。
 と同時に、生徒の大半を占める非ドイツ系子弟を受け入れることにより、ドイツ語やドイツ文化をブラジルに普及させる仕組みとしても大いに活用している。
 学校はドイツ系コロニアに根を張りながらも、ドイツ本国に対するイメージ向上に貢献し、ドイツ系企業に優秀な人材を供給している。
 ドイツ系、イタリア系、スペイン系にしても、元々ヨーロッパから来た者として、ポルトガル人を身近に感じ、彼らが作ったブラジルとその統治機関を尊重しながらも、過大評価することなく、必要に応じて批判してきた。
 戦前・戦中に敵性国とされようとも、ドイツは戦後も臆することなくドイツ系学校を支援し、一貫したブラジル重視政策を貫いている。既存の私立学校を支援・強化する形で、効率的に文化普及の目的を達成してきた。
 とすれば、日伯学園を構想する場合、それはコロニアだけの問題ではない。
 学校構想とは、物理的に校舎を建設することばかりでなく、より根本的な様々なこと、例えばコロニアとしての将来展望などを広く議論することが前提とされるのではないだろうか。
 移民国家は、民族同士のしのぎ合いの場でもある。欧州大陸でもまれ、植民地運営の実績を持つ民族と、百三十年前まで鎖国をしていた島国・日本。当然、ハンデは大きい。
 日本政府自身の教育や外交に関する姿勢、進出企業のブラジル市場攻略戦略、そして移民はどう伝統を維持しながら子孫を繁栄させるのかという哲学。日伯学園構想は、それらの展望が交錯する中心に据えられるのが、あるべき姿なのかもしれない。
(第三部完 深沢正雪記者)※この連載は第四部で終了します。


再浮上する日伯学園構想−第1部 日伯学園をめぐる戦後移民史

再浮上する日伯学園構想−第2部 日系ブラジル学校の現状


■再浮上する日伯学園構想−第3部 外国系ブラジル学校をめぐる諸相−(1)−ユダヤ系−コロニア全体で支援−貧困≠ヘ同化≠ニ同意語

■再浮上する日伯学園構想−第3部 外国系ブラジル学校をめぐる諸相−(2)−ユダヤ系−ポ語で伝統継承−学校で本国の首相選挙?!

■再浮上する日伯学園構想−第3部 外国系ブラジル学校をめぐる諸相−(3)−ユダヤ系−『ユダヤ史』は正課−アイデンティティ形成を学校で

■再浮上する日伯学園構想−第3部 外国系ブラジル学校をめぐる諸相−(4)−ユダヤ系−大学生も組織化−スポーツクラブが コロニアの心臓

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