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■帝王切開多いブラジル(下)―感動伴う自然出産―周りが支えて不安と痛み超越

3月8日(金)

 聖市在住の神戸めぐみさん(三八)は昨年五月、自然分娩で男の子を出産した。「感動しました。出産の最中は痛かったけれど、赤ちゃんが生まれた瞬間、自分も一緒に生まれてくる気がしました」と、神戸さんは自らの出産体験についてそう語る。
 自然分娩は帝王切開とは違い、陣痛に耐えながら長い時間をかけて出産する。神戸さんの場合は難産で、出産まで八時間かかった。陣痛の苦しみは、ずっと付き添った産科看護婦(助産婦)の西ビューマさん(四七)と夫の保さんの、温かい介護のおかげで和らいだという。神戸さんは「周りに支えられながら不安と痛みを乗り越え、出産して、自分が変わったことを感じました」と、当時を振り返った。
 神戸さん夫妻はセアラ州で行われていたJICAの母子保健プロジェクトで通訳として参加していた。そこで出産の知識を深めた神戸さんは「出産は自然分娩で」と思うようになった。
 同プロジェクトで西さんと知り合い、神戸さん夫妻は西さんに助産を依頼した。「お母さんが頑張って、私はお産を手伝うだけ」と言う西さんは、助産婦を二十五年間務めてきたベテラン。難産だった神戸さんの出産にも全く動じることなく、神戸さんの不安を取り除きながら元気な男の子を取り出した。
 「帝王切開自体は大事な手段。でも、いきなり(帝王切開を)するのはおかしい」。西さんも最近の帝王切開偏重の出産風潮について疑問を投げかける。
 西さんによると、この現象は妊婦と医師両方に原因があるという。「妊婦は(自然分娩の情報不足で)痛みを恐れるから、たとえ赤ちゃんにリスクが及ぶ可能性が高くとも帝王切開を望む」と、親の都合の出産が多いことを指摘する。中には「自分が産みたい日」に合わせて半ば強引に切開する妊婦もいる。成熟するのに赤ん坊によって個人差があるため、未熟児になる危険性が高い。
 「医師は自然分娩の情報を与え、不安や痛みを和らげてあげなければならない立場。にもかかわらず、十分な説明を行っていない医者が多い」と、西さんは医師側の問題も説明する。
 何の情報も持っていない妊婦は、当然、専門知識を持っている医師の指示を信じ、帝王切開してしまう。また、病院の自然分娩では、医師は出産の際だけ立ち会い、冷たい雰囲気の中で行われることが多く、妊婦にはつらい経験でしかない。
 医師、妊婦、その家族が「出産」に対し、子供を産むための通過儀礼程度としか考えていない傾向が目立つ。それが全国平均帝王切開率四〇%、中産階級以上では九〇%という数字に表れている。西さんは「自然分娩でも、帝王切開になってしまっても、正面から向き合って、周りの人たちと一緒に取り組めば良いお産になる。それが一番大事なこと」と語る。
 最後に神戸さんは、出産した助産所の額に記されていたメッセージを紹介してくれた。「子供が生まれて、母親が生まれて、父親が生まれた―。家族が生まれる」。神戸さんは出産の尊さを、このメッセージに感じたという。
(藤本卓郎記者)


■帝王切開多いブラジル(上)―見直される自然出産―重要な胎児と母体の生理

■帝王切開多いブラジル(中)―医者に法的な圧力―自然分娩軽視する傾向も

■帝王切開多いブラジル(下)―感動伴う自然出産―周りが支えて不安と痛み超越

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