■再浮上する日伯学園構想−第一部 日伯学園をめぐる戦後移民史(12)−コロニア100年の計=|二世巻込み団体再編を
1月31日(木)
文協創立者たちの声を身近に聞いていた、ある古参移民は言う。
「コロニアも全盛期を過ぎて"構造不況"の時代になった。ならば、県人会も文協もご破算にして、最後に一致団結して、思い切った手を打たなくてはならないのではないか」と組織再編によるコロニア団体統合を強調する。
現実的な手段として「日伯学園には、すでにあるものを活用したらいい。かつてのような、総花的なことはもうできない。今あるものを継続させたい気持ちは分かる。けれども"コロニア百年の計"のためになら、自分たちが作ったものだからこそ、整理できるはずだ」と訴える。
これまで見てきたように、戦後、いろいろなニュアンスの日伯学園構想が語られてきた。
民族テロを行った野蛮な民族・日本人、敗戦国・日本という負のイメージがブラジル社会から持たれていた逆境の時代に、移民社会の再編という大課題に取組んでいた頃、密やかに語られたモデル・スクール構想。
日本が高度経済成長期に入り、日本からの進出企業が押し寄せた奇跡の七〇年代初頭に語られた、移民社会最盛期の壮大な総合学園構想。
ナショナリズムを掲げる軍事政権が実質的に崩壊し、多文化主義が認められてきた七〇年代終盤から八〇年代初頭にかけて語られ、日系社会の団結がないながらも、唯一実行された日伯文化連盟の日伯学院。
もっとも豊かな建学理念が語られたのは、戦後の一世社会全盛期であった七〇年代初頭の延満構想ではなかっただろうか。
延満文協会長は当時、「その将来を想うとき、文化協会の活動も順次コロニアの域を脱し、ブラジル社会内にあっての日本文化の機関として発展するため、このような長期計画(総合学園構想)を、一世が健在な時代にぜひとも実現させて後世に伝えたい」という熱い思いを書き残している。
"コロニアの域を超えて発展する"。この方向性は、文協創立者たちの原点とも言うべき考え方ではなかっただろうか。
日伯学園の重要性は誰もが認めながら、最優先課題にされてこなかった戦後史は見てきた通りだ。移民百年祭までに、またそれが繰り返されるのなら、チャンスは二度と来ないかもしれない。
大正小学校の時代は、生徒の親が一世であり、話は分かりやすかった。現在は三世の時代に入っている。彼らが「どんな日伯学園なら子供を通わせるのか」を見極めることは、アリアンサから学んだ教訓だ。
また篠又さんが指摘するような「設立後十年間の経済的な補填」は、移民百年祭時点で創立したとしても、二〇一八年までの長期的計画になる。今現在、大半が七十歳を超えて年金生活している一世の手におえるものではないだろう。
ロベルト・ノリオ校の山内和子さんが指摘する「リーダー不在」も、日伯学園検討委員会の中村委員長のような戦後移民と、二世・三世層の密接な協力関係の中で解決していく以外に方法はない。
つまり、資金的にも人材的にも、二世・三世らの理解や協力なしにはありえない計画であり、彼らへの橋渡しを含んだコロニア再編が大前提になるだろう。"コロニアの域を超えて発展する"ならば、避けては通れない道ではないだろうか。
前述の古参移民は言う。
「文字が変だといって、それだけでブラジル人に嫌われた戦時中は、そんなに昔のことじゃない。ここで生き残っていく人々が、そんな嫌な経験を二度としなくてすむように、日本文化に理解あるブラジル人を増やすだけでも、日伯学園は大事なことだと思う」と日伯学園の意義の根本を訴える。(第一部完・深沢正雪記者)
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